去年リリースされるはずのワイン。1年もの長い間、お待たせしました。本当にご迷惑をおかけしすみません。去年のリリースはVin de France プリムールとしての販売予定でしたが1年も待つとちゃっかりとAOCを取得してのご紹介になります。
一昨年2010年と昨年2011年との大きな違いは、まず第一に収穫が遅れたので糖度が高く、その為潜在アルコール度数が14.5度位(2010:14度)。第二は比重値が一昨年は995。昨年は997迄しか下がりませんでした。それで瓶詰めを決行した事が原因です。
11/2に瓶詰めが終わり、11/3にラベル貼り。11/4にトラックがやってきて飛行機で運ぶ段取りをしておりました。その後噴いてしまったという事件になり出荷を急遽中止。それに関しては昨年皆様にご報告した通りです。
その後どうなっていたか…、そのまま寝かせておきました。その寝かせ方は2通り。
1.ラベル貼りを終え、箱に入れたワインはそのまま横に寝かせる
2.まだラベルを張っていないで縦にしてあったボトルは立てたまま寝かせる
何故そうしたかというと、本当に何が原因で噴いてしまったのか?が判明できていなかったからです。ワイン達を1日も早く出荷したくて12月に状態を見て見ると…立ててあったワインは1本も吹かず、寝かせていたワインだけが吹いている、と言うより漏れていたのです。「これはコルクが明らかにおかしい…?!?!?!」
そこで横状態の漏れたワインのコルクを全部打ち直し、縦状態のワインのうち1パレットだけコルクを打ち返しました。そのコルクはDIAMといいボワ・ルカ08から切り替えた上質物。
このような訳があって、4通りのワインが出来ました。
●ラベル貼りを終え、箱に入れたまま横に寝かせる
1.コルクを打ち返したもの
2.コルクが前の紫のカラーのもの
●まだラベルを貼ってなく、縦にしたまま寝かせる
3.コルクを打ち返したもの
4.コルクが前の紫のカラーのもの
そしてお正月明けにもう一度状態をチェックしました。そしたら予想どおりです。漏れたのは2.の紫のコルクで横にしたワインだけ。後は一本も噴いておりませんでした。
結果として2010年同様DIAMのコルクを使用していれば、問題なく去年出荷ができたのです。それを2011年は可愛いデザインを重視した紫色の合成コルクを使用したのが裏目に…私の判断ミスです。後悔しても先に進みません。これを経験にしたいと思います。
去年たくさんのご予約を頂戴し、こんなにも長い間お待ち頂き頭の下がる思いです。でも待った分、美味しくなりました。この味わいは樽や大きなタンクで熟成したワインと全く違います。ワインの味は当初の予定と違って全く違った熟成感で、なかなか美味しいです。瓶の中でゆっくり熟成が進み若干泡が残りましたが、樽で熟成させるのと瓶で熟成させるのとこんなにも味わいが変わるのだと理論ではわかっていながら改めて認識をします。同じ熟成でも瓶で1年も熟成するとこうなるのだ!と改めてワインの世界の広さを感じます。
後にも先にももう2度と造りません。いや造れません。最初で最後のワインです。
最初の1杯が泡があって心地よく、いかにもプリムールというフレッシュ感が残り、2杯目から澱が混ざり、味わいにぐっとコクが加わります。そして3杯目が濃厚な味になりいつものボワ・ルカの
白ワインをクリーミーにした感じ。若くてそして熟成感のある2つの面白い側面が重なり、不思議な不思議な、心地よいアンバランスでユニークな風味なのです。私も初めての味わいです。最初で最後の醸造です。 もう絶対にこういうスタイルは造れませんし造りません。
このワインの名前はトゥーレーヌ・ブラン キュヴェ“P”[2011]。それはプリムールになる予定の“P”とペティヤンのような“P”でこの名前にしました。
ただ大問題が…。
長〜い説明でご理解頂けると思いますが、結果1年もの間4種類の違う状態で寝かせました。なので味わいの瓶差があるのです。具体的に言うと、フレッシュ感のあるものと濃厚な味わいが複雑な状況下で熟成し、一部のボトルにグリセロールが多く発生してしまいました。それは取り除く事が出来ません。
なのでそのボトルに当たってしまうと、私の説明文と違った味わいのワインになります。 グリセロールはトロっとした成分ですぐにわかります。アルコールの1種で脂肪酸と結合し、その成分が多いとワイン用語のディスクのしっかりした重たいワインと高級ワインに良く使われる表現になります。体にはもちろん害はありませんが、好き好きがあります。無色透明の糖蜜状液体でエタノールに可溶、一般的にワインの粘土になり味わいも構成するのです。その原因は定かでありませんが、発酵途中における温度変化が原因とされております。
うちのワイン、特にソーヴィニヨンはアルコール度数も高くエキスも濃いのでグリセロールが出やすく、自分でも過去自分の造ったワインで何本かこういったワインに当たりました。
ただこのキュヴェ“P”はその確率が恐らく3%はあると思われます。なのでそのワインに当たってしまう可能性が高く、それを外観からはじく事ができず、その可能性の中で購入して頂かざる得ません。申し訳なく思います。もう1つは、ナチュラルワインの中でもウルトラ原点的な造り方をしたキュヴェ“P”には澱がとても多いことです。ですから少しでもこういうワインに懸念感のある方は残念ですが
飲まれない方が良いかもしれないと思っております。このこともご理解下さいませ。
そしてキュヴェ“P”の最初のコンセプトの関係で、ボトル詰めは通常より低い液面です。コルクからかなり下にワインがあります。ちょっと損した気分になるかもしれません。それは醸造上、どうしても仕方のなかった事でございますのでご了承いただけましたら幸いです。ただ当たったワインは美味しいです。こんなスタイルになるとは思いませんでした。
さっきも書きましたが3度楽しめます。1杯目、2杯目、3杯目と味が変わります。
まだまだ瓶の中でワインは生きている事を証明するワインです。私はグリセロールの多いワインも美味しいと感じます。もともとのジュースが美味しいですから。
以上の諸事情、注意点などなど、どうぞご理解頂けますようお願いいたします。もうこういう問題の多いワインは2度と造りません。なので本当に最初で最後です。
━ 新井順子 ━
大変恐縮ですが、ご理解いただける方のみお買い上げ下さい。
※詳細は新井さんのコメントをご覧下さい(画像クリック)