< 洗馬 赤 2013 >
ドメーヌ・オヤマダのフラッグシップ。
2013年の洗馬は凍害の影響で、大きく収量が落ち込んだが、収穫できたブドウはとても美しいものだった。醸造は四恩醸造に委託。
カシス等の黒い果実の中に、アーモンドの香ばしさが香る。赤シソのような爽やかな香りが冷涼な土地のブドウを感じさせる。香りの複雑さに加え、厚みのある果実味と、味付きの良さ、よく熟したブドウを感じさせる柔らかい緻密なタンニンが、土地のポテンシャルと小山田氏の丁寧な仕事を物語っている。
洗馬の畑単一のキュヴェ。様々なヴィニフェラの混植混醸。
洗馬(せば):長野県塩尻市洗馬。垣根仕立て。なんと標高700m。小山田氏が唯一山梨以外で所有する畑。
「農薬を使うことが必ずしも安定したよい葡萄生産ができるわけではない」と感じている中、2002年頃にクロード・クルトワのラシーヌ1999年を飲み、ビオディナミに興味を持った。実現することが難しいとの反対意見もある中、2004からビオディナミをスタート。2004, 2005 はヴィンテージがよかったこともありスムーズに収穫。2006は雨が多かったが、適切なタイミングでボルドー液を撒いて対応できた。その体験から農業では、農薬の使用の有無よりも、「日々の畑の観察とタイミングの良い管理作業」により良いものがつくられることを実感。化学合成農薬は使わず、硫黄とボルドー液だけで10年に9回良いブドウを取ることを目標としている。(残念ながら、10年に1回はどうしようもない年があると想定している)
ビオディナミの調合剤は5年間撒いた。しかし、ヨーロッパの乾燥農業地帯と日本の湿潤な農業地帯では、農業、気候風土、歴史の成り立ちも全く違う。調合剤を撒いても、茂った雑草に覆われ実際に地面にも届かない中、調合剤の意味への疑問が常にあった。無論否定するつもりはないが、北海道や阿蘇など、草が少ない土地以外では、ビオディナミより雑草に対応することが大切であると感じている。そういう中で福岡正信さん、川口由一さん、岩澤信夫さんらの自然農法の流れを汲むと、要は「雑草といかに共生するか」にいきついた。
虫の防除に関しては、植生を多様化することによりほぼ問題がなくなった。植生を多様化すると昆虫も多様化し、害虫の相対的割合が減る。また害虫自体が他の虫に捕食される連鎖が生まれることにより、絶対数も減る。
「不耕起で草を生やす土づくり」がよいと感じている。耕す代わりに草をある程度の長さまで生やし、それが倒れ、土がフカフカになる。日本の土壌は水分が多く、借りた畑は肥料が残り窒素が多いこともあるため、ブドウは自然と伸びる。肥料が一切不要とはいわないが、沢山の肥料を必要とはしない。特に、玉を張らせ果粒を大きくする食用ぶどうと違い、ワイン用は果粒を小さくしたいため、伸びた草が倒れたことによって存在する有機物で充分であると感じている。
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